薬剤耐性(AMR)とアニマルウェルフェア(AW)は、
別々の議題として扱われてきた。
しかし近年の査読論文は、この二つが
同一の構造問題の表裏であることを示している。
本稿は、医師・獣医師に向けた、科学的根拠に基づく簡潔なブリーフィングである。
薬剤耐性(Antimicrobial Resistance)は将来の脅威として語られがちだが、最新の疫学研究は、それが既に進行中のパンデミックであることを示している。以下の3つの数字を、まず共有したい。
世界で販売される抗菌剤の、実に約73%が家畜用として使用されている(Van Boeckel et al. 2015)。
ヒト医療で医師が慎重に処方する抗菌剤の効力は、何倍もの規模の畜産現場での使用によって、静かに、しかし確実に、削られ続けている。
「AMR問題は、ワンヘルス(One Health)として医・獣医・環境を統合的に考えるべき」という命題は、もはや修辞ではない。近年の研究は、畜産現場におけるAW欠如が、AMU(抗菌剤使用量)増加の直接的な駆動要因であることを定量的に示している。
この連鎖の最上流の1〜2段階が、まさにアニマルウェルフェアの守備範囲である。つまり、AW改善はAMR対策の「倫理的付録」ではなく、疫学的・構造的な上流介入なのだ。
以下は、AWファクターとAMU(抗菌剤使用量)/AMR(耐性)の関連を定量的に示した主要論文のサマリーである。
上記の科学的エビデンスを踏まえた時、現行主流の畜産と、AW配慮型畜産の構造的差異は、以下のように整理できる。
ここまでの科学的事実を踏まえると、以下の含意が導かれる。
本ブリーフィングは、AMRとアニマルウェルフェアの関係を、最新の学術論文の情報を体系的に整理し、医師・獣医師双方が共有すべき視座を提供している。